2011年10月31日

オリンパス疑惑とその報道

先週あたりからじんわり話題に上ってきたのが、オリンパス社のM&Aに絡む不正疑惑です。
それと併行して、大王製紙社元会長の個人的巨額借入事件もありました。

後者は、その資金使途がラスベガスなどの博奕の損失補填であったという事実発覚からこっち、センセーショナルな報道となりましたが、一方のオリンパスの報道は最近になるまで、何故か極めて小さい扱いです。
それも先週行われた社長交代の記者会見に関しての表面的な報道に終始。
同社はその2週間前にも突然の社長解任騒動があったばかりだというのに。

誰が考えても何かありますよね。
それも相当にやましい何かが。
しかし、疑惑本体について各報道機関の積極的な取材がなされた様子は、今のところありません。

大王製紙については、個人が会社の金で博奕や投資を行い、百億円超摩ってしまったという、ただそれだけの馬鹿っぱなし。
しかし、庶民感覚とかけ離れたこの事実に対して世間の耳目は大いに集まった。
3代目のバカ社長(と言っても東大は出られているようですが)の放蕩三昧とそれを止められなかった大手上場企業経営陣。
ここまでくればマスコミの格好の餌食です。

さて、両社の事件(オリンパスは事件性を否定していますが)とも、企業のガバナンス(企業統治)に対する不信感を投資家や海外メディアに植え付けたという点では共通しています。
余談ですが、九州電力のやらせメール事件もこれに近い構図。

ガバナンスについて説明すれば話がとてつもなく長くなりますので、これはまた別の機会にしますが、今回のオリンパス事件には他にもいくつかの大きい問題が含くまれています。

今日の日経新聞の報道では、フィナンシャルタイムズのインタビューに答えて野田総理がオリンパスの不透明な会計処理について事実関係の解明を求めた、とのこと。
オリンパスはもはや簡単な幕引きはできなくなりました。

この話のベースは今年7月に、経済紙月刊FACTAが、オリンパス社が2006年から2008年にかけて行ったM&A(企業買収)に関する巨額の不透明な資金についての疑惑記事を掲載したことに始まります。

詳細は割愛しますが、この4月にオリンパスの社長に就任したばかりのウッドフォード氏は、菊川前社長(現会長に対してこの記事についての真相究明を迫ったところ、突如10月14日に、それも就任わずか6カ月で社長を解任されます。
その後社長に復帰した菊川会長はこの解任劇を『経営手法の問題』と説明しただけ。
海外メディアがこの疑惑についての報道姿勢を強めると株価は急落。
市場に不安が広がると26日に菊川会長は急きょ代表を辞任します。
会長欠席の記者会見。
但し疑惑についての説明は一切なし。

疑惑そのものの事実関係は野田総理発言で、解明に向け動き出すでしょうが、僕が感じた問題は別のところにあります。

ひとつは監査法人と企業の癒着についての疑惑。

オリンパスの監査担当は2009年6月まであずさ監査法人。
2009年に急きょ新日本監査法人に契約変更になっています。
両監査法人ともにオリンパスの過去の会計処理についての問題提起はされていません。
今回の疑惑報道が事実だとすれば、過去の監査についての監査法人の責任は重大です。

このところ、新日本をはじめとした日本の大手監査法人は、公認会計士の大量採用によるコストアップと不況による監査先企業からの契約料の引き下げ圧力などが重なり、内実厳しい経営状況が噂されています。
そこでまさかまさかですが・・・。

日本の株式市場の信頼性を損なう問題を含んでいる、ということ。

そしてもうひとつは、これまでの日本のマスメディアの報道姿勢に対する疑惑。
当初、7月にFACTAの記事が出て以来、どの新聞、TV局にもこれを追いかけて取材したというような形跡が見当たらず、どちらかと言えば無視してきたということ。

オリンパスに関し、つい先日までの日本のメディアの報道を見る限りでは、海外メディア報道の引用とオリンパスの記者会見内容の紹介記事に終始しているのです。
オリンパスの社外取締役に元日経BP社の副社長がいたことも、通常であれば一番に追いかけるべき日経新聞が動かない理由という穿った見方もありますが、それは別にしても、オリンパスは新聞、TV局にとっては大口のCMスポンサーであるという事実です。
一連のだんまりは、どう見ても大口の広告主への配慮としか思えません。
普通ならこの手の疑惑には鬼の首を取ったようにはしゃぎまわるマスコミが、こぞってだんまりを決め込んだ。

最近の大新聞やTVキー局は、広告収入のガタ減りと、読者や視聴者のTV新聞離れとで台所事情は相当に厳しいとききます。
そんなお家の事情が紙面、ニュース面にサジ加減をしているとしたら。

オマケはゴルフについての報道です。

今年絶不調の石川遼君、宮里藍嬢ですが。
例え彼らの今日の成績が10位以下、時には予選落ちであってもメディアは常に一番に彼らのニュースと絵を持ってきます。
最終日の優勝者は別としても、例えば前日まで、不動裕理が首位を走っていたとしても彼女の絵はチラッとも出てきません。

それは視聴者が好むスター選手への追従ってこともあるのでしょうが、実は彼らの後ろにいる彼らの契約先大口スポンサーを意識した扱いなのではないかと。

単なる僻みでしょうか。




Posted by 風街ろまん at 18:23│Comments(0)
 
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