こんさるたんと奮闘記

昨年大みそかの朝日新聞朝刊一面トップに乗った
「配属先は 『追い出し部屋』 / 会社 『退職強要ではない』 」
という記事が波紋を広げているようです。

この記事を契機に、厚生労働省は噂の５社について違法労働行為がないか調査しているようです。
５社とは
パナソニック、シャープ、ソニー、ＮＥＣ、朝日生命
内４社は“落日の日本家電大手”でいずれもリストラが喫緊の課題となっている会社です。

『追い出し部屋』とは
記事を読まれてない方に簡単に解説すると

追い出し部屋とは戦力外と見なされて異動を命じられた社内失業者の受け入れ先部署の通称。
もちろん会社では追い出し部屋という名前ではなく、「事業・人材強化センター（ＢＨＣ）」「キャリアステーション室」「プロジェクト支援センター」など、それらしい名称が付けられている。
しかしその実態はと言うと、リストラ候補者を集めるための部署ではないかと言われている。
配属された社員は自分自身の出向先を見つけることや、ひたすら単純作業を行うことを会社から強いられ、最終的には 「自己都合」 による退職を強要されるのだという。

この記事の対象企業はパナソニックです。
本社から遠く離れた横浜市の子会社敷地のビルの一角にその部署はあり、社内の様々な部署から異動させられている。
取材時の在職者リストには449人が名を連ねているとのこと。

人員削減には大きく四つの手法があります。
【採用抑制】【出向】【早期退職募集】【指名解雇】。

【採用抑制】は新規採用を抑制し定年による自然減を待つものですが、削減に長期間を要するので緊急性に欠けるのと年齢層が歪になる（ある年齢層だけが欠けてしまう）のが欠点。
【出向】は自社の仕事に関わらない出向期間中も一部の人件費負担が残ってしまいます。
【早期退職募集】はリストラ策として最も一般的ですが、割増退職金の支払いは仕方がないとして、自社に見切りをつけた優秀な人材から退職していく傾向があり、加えてそのような人材は高い技術力を有しているため人材、技術、双方の流出をともなう恐れがあります。
【指名解雇】は生産性の低い従業員から削減できるという企業側のメリットはありますが、解雇事由を巡っては「不当解雇」として提訴されるリスクが発生します。

それは避けたい。
これがため、役に立たない従業員を自己都合退職に持っていくためのブラックボックスとして『追い出し部屋』を設置した。
という次第。

事実だとすればパナソニックは労基法違反を承知で違法労働行為を行うブラック企業の範疇に入ることになります。

「役に立たない人材」とはどのような人材なのでしょうか。
サラリーマン経験に照らし合わせれば、おおよその想像は付くのですが。

能力が低いか責任感が薄く仕事を任せられない人。
同様に成果の計算がたたない人。
協調性がなくチームワークからはみ出してしまう人。
会社の不利益になるような問題行動が多い人。
等々。

心当たりがあると仰る諸氏もおられると思います。
僕にもツラツラっと指を折る程度には心当たりがあります。

しかし、それが総て真実かについてはやや疑問が残ります。
評価は上司がする以上、その人固有の偏見や好き嫌いがあるからです。

責任の所在で言えば、会社には採用した責任があります。
有能な人材に育て得なかった責任もあります。
人材を生かし得なかった組織上の問題に対する責任もあります。

総じて最も罪が重いのは戦略を誤り、かかるリストラをせざるを得なくなった経営陣の不明でしょうが。

いずれにしても、かつてはこのような一流企業に入社できたと喜んで仕事をした果てが 『追い出し部屋』 行きとは。
就活にあたふたとするわが子を投影させてみると実に虚しい。

『追い出し部屋』 のような存在は実は10年以前からいろんな会社に存在したといいます。
では何故マスメディアもこのような問題を大きく報道してこなかったのか。
上に上げた５社のような企業はマスメディアにとっては特Ａ級の広告主です。
そこに遠慮なりが働いたとすればこれも問題。
穿った見方でしょうか。