2009年10月08日

酒屋さん

昨日は瀬戸内沿いのある街にある酒屋さんにお邪魔しました。
新幹線の新駅から車で5分程度行ったお店です。

駅に降りると、タクシーは数珠繋ぎに並んでいるのですが乗降客はパラパラ。
新幹線が止まる(もっとも“こだま”だけで“ひかり”や“のぞみ”は通過するだけですが)駅ですのでもう少しは賑やかな所かなと想像していたのですが。

後でお聞きしたところ、街には石油精製所や製鉄所、自動車工場、化学工場など大きい工場があるとのことですが、昨年来の不況で工場労働者の大量リストラがあり経済的には厳しい状況になっているそうです。

その酒屋さんは店舗販売と飲食店への酒類卸しをやっているのですがともに売り上げが減り続けています。

15年前のピーク時は年商10億を超えていたのに前期の売り上げは2億4千万円。
4分の1以下の減りようです。

近くに酒類を扱うスーパーができたこととコンビニの乱立が原因だと説明してくれました。
一般ユーザーが一挙に離れていった経緯が読み取れます。

店舗はお世辞にも綺麗とは言い難いし、間口も狭い。
失礼ながらよくこれでやっているなと逆に感心してしまいました。

毎日同じ環境で仕事をしていると第三者や肝心のお客様にどう見られているのかさえ気づかず、関心もなくなってしまうのでしょうね。
不振企業には在りがちです。

去年より売上げが減っていることは認識できても、毎日の仕事についていえば昨日、今日、明日は殆ど何にも変わらない。
変化に気付かない。
だから問題意識も涌いてこない。
明日も今日と左程変わらない日常が約束されていると信じているのでしょうか。

よく茹でガエルという表現がされますが、その通りの様子です。

もっとも、それは中小零細企業に限ったことではなく、大企業の経営とてまた同様です。
企業の寿命は30年といわれる所以もここらあたりでしょうか。

過去に成功体験があればなおさらです。
成功した経営スタイルを変えることができず、そのまま破綻まで突き進んでしまう事例は数えきれません。
30年と言いましたが、今は10年もあれば経営環境は様変わりします。
1990年代を節目に社会も経済の仕組みも全く違ったものになっているからです。

この酒屋の社長さん、昨年父親から経営を譲られ社長業2年目だそうですけど、どうみても負の遺産だけ押し付けられた格好です。
社長交代のとき、既に銀行借り入れの保証も引き受けてしまっていました。
もう、戻り道がない。
口には出しませんが同情せずにいられませんでした。
真面目に仕事に取り組んでおられることが分かっただけに・・・・。

今仕事をさせて頂いているGSさんもそうですが、これらの業種は衰退業種と言われています。
明日が見えない事業です。
長くはやれないなと分かっていて辞め時が掴めない。

一般的に、商材がコモディティー化している事業は価格志向が強く最後は規模の大きさがものを言います。
スーパーだって酒屋だってコンビニだって置いているビールや酒に基本的な違いはありません。
汚い店で買うより綺麗な店で買ったほうが気持ちはいいけど、価格が安いんだったら店は多少汚くたって構わない。
遠いか近いかもひとつの選択材料だけど車で5分程度だったら域内に競合店があれば一番安い店で買う。

では何処にもないような商材を取り扱えばいいのでは・・・・。
残念ながらマニアックな商材を好む人の数は限られており、地方の町ではそれこそ何ヶ月に数回しか売れないような商材を置いておかなければならなくなります。
それでは商売は成り立たない。

ネット通販という方法はありますが、HPを含めシステムを構築する費用も馬鹿にならないし、人気のあるブランドは蔵元が卸してくれない。
付け焼刃でやってもダメです。
それこそ綿密な戦略の上になりたつ話だと思います。

その酒屋さん、キャッシュが既にカツカツでした。
3月にまとまった借入れをしたというのに、全く残っていませんでした。
この社長さん、決して仕事をサボっている訳でもない、法外に遊んでお金を使ったわけでもない。
真面目に働いています。
しかし環境が悪すぎるんです。
地理的な環境も社会的な環境も。
しかしそれを言ったって、同情はしても誰も助けてはくれません。


大成経営コンサルティンググループ
(株)船井財産コンサルタンツ 
九州相続相談センター  
お問合せ:fzc-m@taiseikeiei.co.jp



Posted by 風街ろまん at 20:47│Comments(0)
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。