2009年03月16日

「金融工学」の嘘

「金融工学」の嘘
益川 最近の金融工学なんて、「あぶく銭」を稼ごうという発想ですね。あっちのお金をこっちに動かしてとか。だけども実需を伴わない限り絶対に価値は生み出されない。考えがちょっと狂っている。

堀場 最近の経済危機で、結論が出たんじゃないですか。本当の意味で付加価値を生まない仕事をいくらやっても、単に人を騙しているだけです。もう一度、バーチャルから実業に戻らない限り、絶対に人類は成長しないという答えがはっきり出たと思うね。

益川 金融工学で使っている「確立微分方程式」なんか、我々が量子力学で使う計算式とほとんど同じなんですよ。だから、私らから見ると、何をやっているかはある程度分かるわけ。計算式におぼれていると。・・・・・一見、複雑に見えますが、実にちゃちなことをやっているだけです。環境が同じような状態で推移している間は問題がないけど、社会的な常識ががらっと変わる局面になるとぜんぜん使えなくなる。。「金融工学」の嘘

(日経ビジネス09.3.9号対談)

これは昨年ノーベル物理学賞をとられた益川敏英教授と堀場製作所創業者堀場雅夫氏の対談記事の抜粋です。

1990年代後半からもてはやされたニューエコノミーの象徴とも言うべき「金融工学」についてお二人が話された部分ですが、特に赤字箇所は腑に落ちる思いでしたので、全文そのまま掲載させて頂きました。

未知の難しそうな話を聞いたこともない英語交じりで話されると、僕たちはつい気後れしてしまいます。
一般の生活者であれば「解らない」と打っ棄っておけるのですが、なまじこういった仕事をしてたり、金融機関で仕事をしてたりすると、「解らない」は「ギブアップ」と同義語で、甚くプライドを傷つけられることになる訳です。
向こうはチャキチャキの理系のマスターやドクターですから、文系の僕らに簡単に理解できるような仕組みでは話にならない訳で、従って端からわかる訳がないのですが、なんだか解ったような顔をしなければ自分らの仕事の領域を荒らされる思いがするのです。

だから、紐解いたこともない「確率微分方程式」なんて言葉が出ると、常識を超えて信じてしまうことになります。
あたかも錬金術かとまがうような内容であっても。
これで世界中の金融機関が騙されました。

リスクにもっとも敏感でなければならないS.プアーズやムーディーズなどの格付け機関までなびいてしまって、付けた格付けがAAA(トリプルA)。
これらの方程式が通るために唯一の条件があるのですが、誰もがその条件を疑いすらしなかった。
その条件とは

『住宅価格は永遠に上昇する。』

本当に馬鹿々々しい話だと思いませんか。
ですから、益川教授がいみじくも指摘された、
『社会的な常識ががらっと変わる局面になるとぜんぜん使えなくなる。』

この理論を文系の言葉で言ってみると、こういうことです。

『サブプライムローンという黒の絵の具が少量あります。これを大量の真っ白い絵の具に混ぜると全体は真っ白で、混ざってない白と全く区別は付きません。だからこれは真っ白です。この真っ白な絵の具に再度少しばかりの黒を混ぜますと先ほどと同じ理屈で全体は真っ白です。』

文系言葉ではこの理屈は通りませんよね。
要するに常識は覆せない。

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Posted by 風街ろまん at 19:26│Comments(0)
 
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